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歴史の風 35 ~被災資料の応急処置~

歴史の風 35

~被災資料の応急処置~

 震災から2カ月ほど経過した5月上旬、津波で浸水した住宅から江戸時代の文書や冊子が発見されました。いずれも濡れたままの状態で、中にはカビが生えているものもありました。このままでは劣化が進み、文字が読めなくなる恐れがあったため早急な処置が求められました。さらに、被災した倉の取り壊しによって、保管していた資料を震災ごみとして破棄せざるをえない状況との情報も入ってきました。

 これまで遺されてきた歴史資料が失われてしまう危険性がありました。そこで、被災した資料を保全するため、さまざまな専門家の助言を受けて、手探りの状態から文化財レスキューが始まったのです。

 レスキューの対象となった文献・民俗資料などの多くは倉の中に保管されていたもので、中でも被害が大きかったのは水に浸かった文書などの紙資料でした。今回はその応急処置についてお話しします。

 まず、救出した資料はできる限り現地で泥を除去しました。その後、アルコールを噴霧し低温で保管することで、腐敗やカビの繁殖を防ぎました。

 5月下旬、一部の資料から腐敗臭がしたため、吸水紙で水分をこまめに除去したほか、資料を水に浸して塩分や汚れを落とす処置を施しました。

 これによって、多くの資料の劣化を抑えることができたのです。

 しかし、その中にはカビなどが原因で開かなくなってしまった文書などがあり、このようなものは東北芸術工科大学へ修復を依頼しました。 

 また、塩分をうまく取り除けなかった冊子などは、東北歴史博物館に依頼し、フリーズドライという特殊な方法で乾燥させました。こうして、展示できる状態にまで修復されたのです。

 被災資料は、古くから伝わってきた価値に加え、震災の記憶も併せ持った貴重な文化財です。市の歴史を語る資料として後世に伝え、活かすことが、私たちの責務ではないかと考えます。