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歴史の風 119 〜市川の契約〜

歴史の風 119

〜市川の契約〜

契約講とは、地域の生活の中で機能する相互扶助の組織です。様々な役割がありましたが、その主なものは葬儀の手伝いで、今のように葬儀社が一切を取りしきるようになる前までは、墓穴掘り、棺担ぎといった役を契約講が担い、なくてはならない存在でした。

市川には、かつてケイヤク(契約)やホンケイヤク(本契約)、ロクシンコウ(六親講)と呼ばれる契約講がありました。3つの組に分かれており、それぞれムンツン組、ノンベ(飲兵衛)組、リッパ(立派)組と呼ばれていましたが、リッパ組はケンカ(喧嘩)組やアバレ(暴れ)組などと呼ばれることもあり、酒の飲み癖で名前がつけられたとも言われています。

隣近所で組織されるトナリグミ(隣組)とは異なり、それぞれの組を構成するイエ(家)は市川地区全体に不規則に点在していました。また、血縁以外の関係性を重視したため、本家分家は故意に別の組に振り分けられたとされています。組の中で死者が出ると、盆正月や農繁期を問わずいつでも葬儀を手伝うという固い契約で結ばれ、代々受け継がれるイエ同士の強いつながりでした。 

しかし、葬儀の簡素化や昔ながらの慣習への否定的な考え方など、ケイヤクを取り巻く状況は時代とともに大きく変化し、活動は下火になりました。現在葬儀の補助の役割はトナリグミや農業後継者クラブに移っており、ケイヤクの存在は年配の方の記憶や、わずかに残った資料にその面影をとどめています。

※暮らしの中でのニュアンスを伝えられるよう、一部カタカナで表記しています。