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歴史の風 130 〜古代の木製品〜

歴史の風 130

〜古代の木製品〜

遺跡の発掘調査では土器や石器だけでなく、木製品の遺物も出土する場合があります。有機質の物質の多くは腐って分解してしまうため、通常の遺跡からはあまり出土しません。しかし、土中の水分量が多く、空気の入らない場所では、そのままの形で見つかることがあります。

本市西部の遺跡は地質的に地下水を豊富に含んでいることから、こうした遺物が残りやすい環境にあります。

具体的な例を挙げると平安時代頃の日常生活に関するものでは、曲物、皿、碗、下駄、櫛、鍬(くわ)や鋤(すき)が出土しています。

祭祀(さいし)に関するものでは、人形(ひとがた)、舟形、馬形、刀形、斎串(いぐし)などが出土しています。人形は人間の身代わりとして、罪や穢(けが)れを背負い、川や海へ流されました。馬形や舟形は人間の穢れを負った人形を他界へ運ぶために用いられました。斎串は結界を示し、刀形は空間を浄化するといった役割があったと考えられています。

こうした木製品の遺物は当時の人々の暮らしぶりを知る上で、大変貴重な資料です。しかし、土中から取り上げた木製品はそのままにしておくと、徐々に乾燥し、変形して原型を保てなくなります。そのため当センターでは、古代の木製品PEG含浸法(がんしんほう)という方法を行っています。PEGとはポリエチレングリコールの略称で、出土した木製品をこの物質に長時間浸しておくことで、木材にしみ込んでいる水分をポリエチレングリコールに置換(ちかん)し、これにより木製品の原型を保つことができます。このような保存処理を行いながら当センターでは貴重な文化財を後世に残せるように努めています。