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歴史の風 132 〜出土文字資料(漆紙文書)〜

歴史の風 132

〜出土文字資料(漆紙文書)〜

 漆紙文書(うるしがみもんじょ)とは、漆の成分によって保護され、土の中にあっても残った文書のことです。容器に入った漆を良好な状態で保存するため、公文書などの反故紙(ほごし)を漆の表面に密着させて蓋をします。その蓋は再度漆を使う際にはずされて捨てられますが、漆が付着しているため、土の中でも腐らずに残り、発掘調査で発見されるのです。本市にかつて陸奥国府があったこともあり、しばしば漆紙文書が出土します。

 今回は、山王遺跡八幡地区の発掘調査で見つかったものを取り上げます。その文書は「計帳」といわれる課税台帳で、毎年作成されていました。残されていたのは、8世紀前半の財部(たからべ)の小里(おさと)という戸主以下の人名が書かれている部分です。注目すべきは、「財部(たからべ)の得麻呂貮拾玖歳(とこまろにじゅうきゅうさい)」という人物の注記に「割附驛家里戸主丈部祢麻呂為戸」と書かれていることです。「駅家(うまや)の里に割附(わりふ)し、戸主丈部祢麻呂(こしゅはせつかべのねまろ)の戸となす」と読み、意味は、駅家の里で働くため、得麻呂を財部小里の戸籍から外し、丈部祢麻呂の戸籍へ編入したという意味です。駅家とは主要幹線道路30里ごとに設置された施設で、得麻呂は駅家を維持していくため、強制的に移住させられたと考えられています。このことから出土文字資料(漆紙文書)駅家は人為的につくられた集落で、得麻呂のような人々によって支えられていました。

 このように、現在残されている古文書だけでなく、遺跡から出土した文字によって、当時の人々の様子が明らかになることも数多くあります。