歴史の風 33 ~市内の文化財被害状況~
歴史の風 33
~市内の文化財被害状況~
平成23年3月11日の東日本大震災によって、市内にある文化財も甚大な被害を受けました。被害の内容は、地震による建造物や石碑等の倒壊、津波による文書や民俗資料の水損など多岐に及んでいます。
それでは、具体的に主な被害の状況について述べていきます。
国指定特別史跡の館前遺跡では、東側斜面に地割れが発生しました。市指定文化財では、沖の井(沖の石)が津波により冠水し瓦礫や車両が流入するなどの被害を受けたほか、南安楽寺古碑群で3基の石碑が倒れました。
内陸部の歓満(かんまん)不動尊・阿弥陀(あみだ)堂(新田地区)、日光院(高崎地区)、陸奥総社宮・多賀神社・貴船(きふね)神社・荒脛巾(あらはばき)神社(市川地区)で社殿の一部に損傷が生じたり、石灯籠が倒壊する被害がありました。
沿岸部では、八幡(はちまん)神社に高さ約2mの津波が押し寄せ、社殿が被災した他、合祀されている萩原(はぎわら)神社や鳥居、境内の石碑も多数倒壊し、杉木立も全て枯れてしまいました。八幡地区の古碑群も津波で運ばれてきた車両や材木等によって横倒しになり、元どおりに復元することが困難な状態でした。一方、建造物も大きな被害を受けました。土倉・板倉が多数損壊し、沿岸部では、所蔵されていた歴史資料や民俗資料が津波で水損しました。さらに、多賀城海軍工廠(こうしょう)に関連する建物として現存していたものも、地震・津波により壁が崩れ、また、江戸時代に建設された貞山(ていざん)運河も津波により護岸が破壊されてしまいました。
以上、簡単に市内の文化財の被害状況について述べました。このような状況から、文化財の調査、保全を目的に文化財レスキュー活動を行いました。その中心となったのは、189棟に及ぶ「倉」であり、新たな歴史的建造物として注目されました。「歴史の風」は、今回から12回にわたって文化財レスキュー活動と「倉」について紹介します。