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歴史の風 102 〜古墓が伝える高橋村の人々〜

歴史の風 102

〜古墓が伝える高橋村の人々〜

高橋の大日北遺跡では、17世紀から18世紀後半に及ぶ近世の墓が70基発見されています。この墓地は、明治19(1886)年の地籍図にその姿が確認できますが、その後は次第に墓地であったことすら忘れられ、現代に至りました。

平成6(1994)年、発掘調査を行うと、円形や方形の木棺に入った遺骨とともに、副葬品が次々と出土しました。ここに葬られていたのは、遺骨を確認できただけで男性11人、女性10人、性別不明21人の計42人で、すべて成人です。推定平均身長は男性156・4センチメートル、女性147・9センチメートルで、高橋村の人々はこの時代の平均的な背丈であったことが分かります。この他にも、都市部から出土する遺骨と比べて虫歯が少ないことも判明しました。

木棺からは、櫛や煙管(きせる)、鏡、剃刀(かみそり)などの副葬品が出土しました。これらは死後も故人が必要な身の回りの用具として、遺体のまわりに添えられたと考えられます。

また、木棺の外側からは、竜形木製品、提灯の底板や漆器、箸などが出土しています。これらは、死者を墓地まで送り届ける際の葬列の人々の持ち物で、死の穢(けが)れを持ち帰らないために一緒に埋められた可能性があります。

土葬から火葬へ、自宅での葬儀から会館での葬儀へと、ここ数十年で葬儀の慣習は急激に変化しました。講や隣組といったなじんだ人間関係の中で、昔ながらのしきたりによって送られ、故郷の墓地でゆっくりと土に還ることができていた頃の様子を知ることは年々難しくなってきています。大日北遺跡に眠っていた人々は、身体的特徴のみならず、当時の日常の暮らしや葬送儀礼の一端に至るさまざまなことを伝えています。