歴史の風 129 〜特別史跡に追加指定された遺跡〜
歴史の風 129
〜特別史跡に追加指定された遺跡〜
市内には、多賀城との密接な関連性から、特別史跡に追加指定された遺跡が3カ所あります。
一つ目は、多賀城が創建された8世紀前半頃の遺跡で大代地区にある 柏木(かしわぎ)遺跡です。砂鉄を溶かし、鉄を取り出すための製鉄炉、炉で使う木炭を作る窯、作業場である竪穴建物跡などが発見されており、多賀城直営の製鉄所であったと考えられます。鉄滓(てっさい)(純度の高い鉄を取り出す際に出たクズ)や鍛造剥片(たんぞうはくへん)(鉄を鍛きたえる際に出たクズ)など、当時の製鉄の様子を伺い知ることができる遺物が出土しています。
二つ目は、多賀城南面に道路で区画されたまち並みが広がるようになった9世紀頃の遺跡で、JR東北本線国府多賀城駅近くの館前(たてまえ)遺跡です。政庁正殿(せいちょうせいでん)に匹敵する大きさの四面に廂(ひさし)が付く主屋を中心として、6棟の掘立柱(ほったてばしら)建物がありました。これらの建物は、国司の邸宅か城外に置かれた役所の跡であったと考えられています。
三つ目は、まち並みが最も拡大して以降の10世紀前葉頃の遺跡で、JR東北本線陸前山王駅西側の山王遺跡千刈田(せんがりた)地区です。この遺跡は、まちのメインストリートであった東西大路特別史跡に追加指定された遺跡沿いの区画に位置しており、陸奥国の長官の邸宅である「国守館(くにのかみのたち)」が発見されました。遺跡の性格を推定する根拠となった「右大臣殿(うだいじんどの) 餞馬収文(せんばしゅうもん)」と書かれた題箋軸木簡(だいせんじくもっかん)や、当時の高級品であった陶磁器などが発見されています。
古代多賀城にとって重要な遺跡は、市内各地に点在しています。このことは、多賀城跡のみならず、この地域一帯が古代東北の要所であったことを物語っています。