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歴史の風 138 ~井戸の発掘調査~

歴史の風 138

~井戸の発掘調査~

 蛇口をひねれば、それだけで必要な水を手に入れることができる現代。そんな生活を私たちは当たり前に暮らしています。しかし、昔の人々は、生活に必要な水を得るために、地下の帯水層から湧き出る地下水を溜(た)めて汲(く)み取るため井戸を造っていました。それは、機能しなくなるとそのまま地中に埋め戻されるのがほとんどです。

 市内の遺跡を発掘すると、集落や居宅、耕作地だった場所から、こうした井戸跡が発見されることがあります。

 井戸は、湧き出た水を溜める井戸底の水溜め部、壁の土が壊れないようにするための井戸枠、井戸内への汚水の流入を防ぎ、水汲みの際の安全と便宜を図る施設として地上に設ける井桁(いげた)、さらには雨水よけや作業空間保護のための井戸屋形(いどやかた)などで構成されています。

 市内の遺跡から見つかった井戸の中から、興味深い事例を紹介します。写真は、山王字山王四区地内における宅地造成工事に伴って発掘調査を行った山王遺跡第214次調査で発見した平安時代の井戸跡です。

 大きく深い穴を掘り込んで、その中に木材を組み合わせて四角い井戸枠をつくっています。四隅に丸木の柱を建て、外側に縦向きの板を当てて、横桟(よこざん)による構造となっています。

 また、四隅の柱にはそれぞれ穴が開けられていて、そこに横桟を当てることで柱同士をつないでいます。この井戸の中からは、仏像の台座の一部(未完成品)と考えられる木製品が出土しています。この付近に暮らしていた仏像作りの工人が使っていた井戸と考えられます。

(問)埋蔵文化財調査センター  TEL368-0134