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歴史の風 107 〜疫病と人々の信仰〜

歴史の風 107

〜疫病と人々の信仰〜

ここ数カ月、新型コロナウイルス感染症の流行が問題になっています。いつの時代も人の生活と病は隣合わせであり、それに対処するさまざまな祈りがなされてきました。今月号は内容を変更し、病とそれに関する信仰を取り上げます。

古代、多賀城の南面に広がっていたまち並みには、多くの人々が暮らしており、発掘調査によってさまざまな儀礼(ぎれい)の跡も見つかっています。中でも河川や道路側溝で人面墨書土器(じんめんぼくしょどき)や人形(ひとがた)といった祭祀具(さいしぐ)が大量に出土しています。人面墨書土器は、土器に人や神の顔を描いたもので、その中に息を吹き入れて自らの穢(けが)れや病気を封じ込めます。人形も穢れを移すもので、どちらも穢れを移した後は川に流しました。この祓(はらえ)の儀礼は、人が密集する都市ならではのもので、疫病の蔓延(まんえん)を防ぐ目的で行われていたと考えられます。

また、昭和24年まで多賀城村笠神の一部であった塩竈市牛生(ぎゅう)地区には、須賀(すか)神社が祀られています。この神社では、周辺の神社が神事で白い幣束(へいそく)を用いる中、赤い幣束が使われています。その理由として、かつてこの一帯で疫病除けの祈祷(きとう)が行われた可能性が示唆されています。赤は魔除けの色であり、現在まで残るこの幣束の慣習は、ムラから疫病の原因を払い退けようとした名残かもしれません。

現在のように医療が発達していない時代、死はさらに身近にあったと考えられます。地域に残るさまざまな資料は、そこで行われた祈祷やまじないへ託した向ける人々の思いの強さを現代まで伝えています。

問合せ:埋蔵文化財調査センター
【電話】368-0134