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歴史の風 126 〜古代の文房具〜

歴史の風 126

〜古代の文房具〜

古代の多賀城は陸奥国府や鎮守府が置かれた、東北地方の行政や軍事の中心地でした。

多賀城では多くの役人が働いていたことから、たくさんの文房具が発見されています。これらの文房具は文書を作る役人にとっては必需品でした。今回はその中でも硯(すずり)について紹介します。

硯は、中国・朝鮮半島から伝わってきました。日本で本格的に生産され始めるのは飛鳥時代になってからのことです。古代の硯は瓦や須恵器と同様、硬い焼き物で作られていました。現在のように石製のものになるのは12世紀からです。

硯にはさまざまな形、種類があります。

ひとつは墨をする部分が丸く、透かし穴をあけた脚がついた台を持つ円面硯(えんめんけん)という硯です。上級役人ほど立派な硯を使うことができました。

平安時代になると墨をする部分が四角で、形が「風」の字のような風字硯(ふうじけん)が登場します。

さらには、食器である須恵器の坏(つき)や蓋(ふた)、甕(かめ)の破片などを硯に転用した転用硯(てんようけん)があります。転用硯は多賀城やその周辺の遺跡で非常に多く出土しています。

硯は普通の集落跡からはほと「古代の文房具」んど出土しません。

一方、多賀城跡およびその前方に広がるまち並みで多量の硯が発見されていることは、役所やその関連施設において膨大な事務作業を行っていたことを物語っています。